Hkousunの垂れ流し

垂れ流すぜぇ……色々となぁ!

メダロット9 ストーリー感想

メダロット9、なんだかんだで1週目クリア。
巷で言われている通り、確かに物足りないなコレ!

 

正確に言えば、話自体はしっかり決着していると言って差し支えないだろう。
ロボロボ団やセレクト隊を裏で操っていた存在など確かに消化不良ではあるが、それはあくまでも校長たち大人が戦うべき敵。
学院の生徒たちが暮らす世界を、生徒たちが力を合わせて守り通した……探検部の物語はそれで十分なのだ!
終盤に至る伏線も割と初期から丁寧に張り巡らされており、確かにその結末に向かっているまとまったシナリオなのは間違いない。
強いて言うなら彼らが守った学院の、どうにか日常を取り戻した姿をクリア後として見届けたかったって程度か。
少なくとも連載打ち切り、俺たちはこの長いメダロット坂を登り始めたばかりうんたら的なあれとは断じて異なる。

話の大筋は古典的と言って差し支えないくらいにド正道の学園スポーツものに近いだろうか。
名門校の底辺お荷物部に主人公がやって来たのをきっかけに部が急激に力を付けて、台風の目や学校の希望になる。
部員不足だったり、荒廃していたり、単に弱小だったりと底辺の形は様々だが昔からある典型的な成り上がり物というやつだ。
そこに島や学院の過去という縦軸の話が関わってはくるが、これらはお話を締めるための舞台装置でしかない。

同時に主人公テンマの成り上がりの物語でもあったと言えよう。部も主人公も底辺(しかも明確な一芸もない)となるとちょっと珍しいパターンな気はする。
同じメダロットでも5やSの5部もこの形式を踏襲しているが、コイシマルはメダロッターとしては新人だったが行動力とリーダーシップがあった。
こちらのメダロット部の場合は校内でと言うよりも、田舎の新設部が都会のエリートを相手に快刀乱麻していく構図。
アラセの場合は勢いの弱さはイブキに補ってもらいつつ、根っこのお人よしとロボトルの腕前で早々にクラスメイトや有力部の部長たちから一目置かれている。

対するテンマは本当に何もないのだ。「笑うなんて誰にでも出来るもん!」とか言いそうなくらい何もない。何なら優秀なだけに好き勝手してた先輩二人が面倒見なきゃと思う程度に不出来だったと言っても過言ではない。
昼行燈で結局最後まで底を見せない部長のクニギク、部で一番の常識人ながら面倒見と気配りと事前準備の鬼で密かに一番チート疑惑まであるリョウマ先輩。
アイドル部でも飛び抜けた才能を持っていたミオ、飛び級の天才少女マインちゃん。彼ら彼女らと並んだ時に何ら自慢できるものが無いのである。
(一応、エリート校の生徒たちと早々に渡り合えるようになる辺り、ロボトルに関しては相当のポテンシャルを秘めていた可能性はあるが)

とは言え、放っておいても独りで好き勝手やれてしまう駿才・天才をひとつの集団にまとめ上げたのは他ならぬテンマの存在に違いない。
特にミオの心境の変化や成長に関しては要所要所で背中を押して大きな役割を果たしている。
クニギクにしてもリョウマにしても「頼ってくれる後輩」「放っておけない後輩」が出来た事は探検部の活動の大きなモチベーションになった事だろうし、
マインちゃんはテンマの影響は大きくないが、フィールドワークと実践の積み重ねである分野で自分以上の知識を持つリョウマ先輩との出会いには多大な影響を受けている。
同時にテンマも学院での暮らしを通じてこの世界の人ならざる隣人、メダロットとの関わり方を見つめ直し、大きく成長する。
……もっともその辺を冨野作品じゃねえんだからさ、ってくらいに語らずに見て察しろしてくるのが持ち味であり短所でもあるが。

この語らないスタンス、もしくは語り切れなかった事がシナリオ面の評価を下げた一番の要因だろうか?
たとえば生徒会長とクニギクの因縁、校長とメタビーや教頭のバックグラウンド。前述の通り、割とコテコテの作品なので大体の察しはつく。
多分説明されたところでディテールの違いはあれど「これ進研ゼミでやったやつだ!」レベルの範疇には収まるではあろう。
他にもロボトル大会やクエストを通じた他の部との交流や、それらを通じての外から見た探検部やテンマに対する評価など……

 

メダルイーター戦後も長々と物語を続ける必要は無い。ほんの少しクエストが追加され、設定の開示がなされていてば、
その上で少し落ち着きを取り戻した学院を、すっかり学院に馴染んだ探検部のテンマとしてロボトルして回れるだけでも大分違ったんじゃなかろうか?
学院にやって来たアサヒが兄の変化に気付いたり、喧嘩別れした元パートナーと今のテンマのやり取りが有ったり……
そんな無数のほんの少しの物足りなさと、いつだってゲームを終えた後に訪れる彼らとの別れの寂寥感が組み合わさった結果がシナリオ面への厳しい評価の正体で

 


――要するに私たちは「テンマたちの活躍をもう少し見届けたかった」のだろう。

 


---以下、キャラクターについて感想---


・ワカコマ テンマ
主人公にして屈指の凡人。現実でもたまに居る出来の悪さも含めて放っておけない可愛げのあるタイプか。
女装もイケるデザインにしたそうだが実際にその機会は訪れる事は無かった。散々女装したイッキとて小学生だぞ?高校生でイケるのは強過ぎやろ!
特に大きく成長したのはメダロットとの向き合い方。ロボトル性の違いがあったとは言え、冒頭でパートナーと喧嘩別れするような子だったんだぜ?
とは言え、何の因果か特待生になってしまった凡人なので、ストーリー中で手に入れたものは他の生徒たちにとっては当たり前みたいなものだったりする。
それでもテンマにとっては何ものにも代えがたい経験であり、ここからどうやって学院のエリート達に追いついて行くのかを見守りたい子でもあった。
イッキやコイシマルなんかは「武勇・冒険の結末を見届けたい」みたいな感覚なので、(自分がおっさんになったってのもあろうが)色々一線を画する主人公。


・シラカベ ミオ
アイドル部期待の新人だったが気性面に問題があり過ぎてアイドル部を去る事になったやベー女。序盤は本当に何だこのアマとしか言いようがなくて好き。
ぶつくさ言いながらもロボトルに興味を持ち始めたり、探検用の衣服を用意したりと探検部の活動には意外なほどに前向き。やはり彼ピか……。
何だかんだで作中で一番ハッキリと成長を描かれた子でもあり、さりとて安易に良い子になる訳でもなかったのはポイント高い。
メインヒロイン格であろうに作中の女性陣でより性格がアレなのはせいぜい悪役くらいと言うのは凄い。しかもそれが魅力になってる。


・シノザキ クニギク
最序盤からいるものの、イマイチキャラクターを掴み切れない御仁。生徒会長との関係とかも明言されないままだしね。
2年間に渡って事故の真相を追い続けてきたんだろうなぁとか、元々初代生徒会長だったんだなぁとか、断片的な情報から推測自体は出来けれど。
出来ればその境遇も胸中もしっかりと語って欲しかった人物。色々と注意しながら周回すればまた印象の変わる人なのかも知れない。


・キクスイ リョウマ
俺たちのえっち師匠。一人でフィールドワークから後輩の面倒、機体の調整までなんでもござれ。さすが皆のリョマえもん
ゲーム的にもシナリオ的にもとにかく頼れる人物ではある反面、あまり自分の話をしない人なのでその胸中が分かり辛い一人でもある。
何も言ってこないクニギクに色々思う所もあったろうが、それでも一人で探検部としてやるべき事をやっていたちょっと素敵すぎて乙女になっちゃう
その地道な努力から島の事やパーツの部品に関しては天才少女マインちゃんを上回る部分もあり、彼女からも師匠と懐かれる。男を見る目があって大変宜しい。
しかもクールなビジュアルのくせに、男の子の浪漫を理解っているような趣味もあって何だこのかっこ可愛い生き物は?!


・コニシ マイン
飛び級でMEDA学院に入学した天才少女。10歳。かわいい。パートナーはデスプロヴィデンスタイタニア。いかつい兵器と幼女の最強コンビ。
将来の夢はメダルを自分の手で作りだす事らしいがまだまだ道のりは遠く、壊れたメダルの再生すらまだまだ難しいそうな。しょんぼりマインちゃんかわいい。
別作品だけど息子のメダルを使える程度には復旧させたオロチって凄かったんやなって。レゾナンスシステムもメダルイーターの能力の再現みたいな感じだし。
本編で語られる事は無いけど、タイタニアによると外出嫌いだったのが、探検部に入ってフィールドワーク好きになった模様。リョウマインの師弟コンビは良いぞ!


・フジイ リュウセイ
テンマの同級生でレスキュー部期待の新人。ライバル、というよりは嫌味な奴と言う印象が強くて無駄にヘイトを稼いでしまいそうな子。
だが個人的には嫌いじゃない。頑張って入ったエリート校の特待生が初期のテンマでは納得いかないのも当然であろうし、見合うだけの努力と実績のある子だし。
それに彼に対する対抗意識(とリョウマ師匠の絶妙な発破)がテンマに成長を促した面も多分にあろう。そういう意味では良きライバルだったと思う。
それに後半の実地訓練中の「どうせ暇なら野営地に遊びに来いよ」って台詞が突っかかっている内にそれなりに仲良くなった悪友感があって好きなんだ……。


・トヨサワ アオイ
アイドル部もう一人の期待の新人。天使過ぎたが故にミオ退部するきっかけになったともいえる子で、そのことを結構気にしている。つまり天使
敢えて言おう。大天使である、と。何せ初期のミオと比較される存在であり、その掛け値なしの良い子加減たるや。最初は腹黒疑ってたよ、正直すまんかった。
汚れちまった悲しみにゆやーんゆよーんゆやゆよーんしているダメな大人には神々し過ぎて直視できない。それくらいには良い子である。アオイちゃんマジ天使
何故アオイちゃんをパーティに加えて連れ歩けないのか?ただその一点を理由に本作を駄作認定する人がいたとして、私はそれを否定する言葉を持たない。
ルート分岐もなく、きっとタフな作業になるであろう周回プレイを乗り越えるモチベーション、その名は大天使アオイエル。大天使アオイエル、アオイエル、アオイエル……


・コノエ サイカ
ミオと並ぶ本作クソ女二大巨頭。とは言えロボロボ団幹部なのでそれ自体は問題ないし、何だかんだでテンマを気にかけている感じも嫌いではない。
何とか学生(高校生)で通じる年齢との事なので実年齢は少なくとも20前後。その台詞を聴いた後のテンマの反応を見るともう少し上かも?
ロボロボ団団長にハニー呼ばわりされていたが、実際どういう関係かは不明。本編終了後どうなったかなども明らかになっていない野も消化不良ポイント高い。
ロボロボ団の姿も学生時の姿も大変えっちで宜しかっただけにもうちょっと頑張って欲しかった感の否めないナイス毒婦


・スルガ テンコウ
MEDA学院の教頭。人当たりが良いとか、無害なイエスマンとかくそみそに言われつつも彼なりに頑張って生きていたらしい。
色々と複雑なバックグラウンドはあるのだろうし、その背後に校長と異なる勢力の影が見え隠れするも全くと言っていいほど語られないんだな、これが。
名誉や金で動くような人ではなさそうだし、彼なりに大義名分はあったのだろうけど、指示待ち世代感の凄い名セリフで色々台無しの残念イケメガネ
しかしまあ、現実の一般人と言うのはおおよそこの人以下なのであり、色々失った後になお立ち上がれるのはやはり出来た人なのだろう、知らんけど。


・フジオカ ソウクウ
MEDA学院の校長。前作主人公的なアレにして、本作縦軸の物語のヒロインとでもいうべき存在。最期の最期で全部掻っ攫っていきやがった!
終始一貫して訳の分からん偏屈ではあるのだが、そいつは彼の鋼の意思の表れとも言えるイカしたヤンキージジイ。
メダロットと人間の死別、死後もなお人との約束に縛られるメダロット。ヒトならぬ友のために人間を辞める事もいとわない覚悟。
ゲーム、アニメ、アプリと媒体を問わず究極のテーマとも言えるそれに対する一つの解を示したと言う意味では歴代主人公よりも遥か上をいく漢。
コイツがもっと色々ちゃんと話しておけば……と言うのもあるが、彼にしてみればどこに邪な考えを抱く輩がいるとも知れないし、
その偏屈さゆえに人間の肉体を捨ててまで相棒を自分との約束の呪縛から解き放つために戦い続けられたとも言えるわけで。
エンディング前のかつての相棒の台詞と一連の流れはただただズルい。あんなん見せられたら許すしかないやろ……!!

 

リメイクや続編が難しいならせめてこの辺の補完をメダロットSでやってくれないかな、と思ってしまうくらいには彼らの事が好きになってしまったのは間違いない。